仙台・東北を拠点に活動する カメラマン&ライターです

【市電のあるまちの風景】ひろでん(広島県広島市)

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以前,広島県三次市に伝わる「稲生物怪録」の取材で広島市に滞在した。稲生物怪録とは、江戸時代の藩士稲生武大夫が30日間にわたって妖怪と対峙し、終い には妖怪たちから勇気を讃えられ財宝をもたらす木槌を授けられるという物語である。何とも荒唐無稽な話だが、武大夫という人物は確かに実在しており、広島 市中区の本照寺には墓があり、子孫も市内で暮らしているらしい。また、物語に出てくる木槌は、同市の本国寺に安置されているという。さらに、広島市稲荷町にある稲生神社は、武大夫ゆかりの神社とされている。
夕闇から夜にかけて稲生神社の撮影をするため、神社前の大通で待機していると近くを市電が次々に通っていく。”ひろでん”の愛称で親しまれている広島電鉄の市電は、軌道の総延長35km、年間輸送人員数5500万人、日本一の市電だそうだ。車両もレトロからモダンまで、多種多様で見ていて飽きない。自動車で広島市内を走っていると、市電の軌道を何度も横切らなければならず、戸惑うこともしばしばある。ドライバーに対しては多少の不便を感じさせるかもしれないが、市電のあるまちは、どこかゆったりとして昭和に逆戻りしたような懐かしさと郷愁を感じさせてくれる。