『古事記』によると、国生みの神であるイザナギとイザナミの夫婦によって、日本の国土は創られた。そして、イザナギ・イザナミから多くの神々が生まれ初代天皇のカムヤマトイハレビコ(神武天皇)へと続き、第33代トヨミケカシキヤヒメ(推古天皇)に至るまで、神々の系譜が編まれ日本の神話の体系が形づくられている。その過程において、大神神社の祭神である大物主大神も登場する。
中つ国を治めていた大国主神は、少名毘古神(日本書紀では少彦名神)とともに国造りを行っていたが、少名毘古神が常世の国へ帰ってしまったため、大国主神は途方に暮れていた。そこに、大物主大神が現れ「吾をば倭の青垣、東の山の上にいつきまつれ」と言い、大和国の三輪山に自らを祀ることを希望した。また、『日本書紀』には、大国主神が大物主大神に「あなたはどなたですか?」と訪ねると、「あなたの幸魂(さきみたま)であり、奇魂(くしみたま)である」と応えたという。このことから、大物主大神は大国主神と同神であり、大国主神の別の御魂として顕現され、三輪山に鎮座したと、大神神社の由緒には記されている。
このように、日本最古の歴史書である『古事記』や『日本書紀』の中に創祀の伝承が明確に記されていることは稀であり、なおかつ祭神を祀る本殿を設けず、三輪山をご神体として祈りを捧げることは、神社の社殿が成立する遙か以前の原初の祭祀の姿を今に留めているということから、我が国最古の神社とされている所以である。
「京都・奈良の寺社(洋泉社MOOK)」より一部抜」
正式名称 | 三輪明神大神神社 |
所在地 | 奈良県桜井市三輪1422 |
祭神 | 大物主大神 |
創建 | 不明 |